AUTUMN / WINTER 25
大人になると知恵や経験値が生きた時間に比例して蓄積されていきます。それ自体は非常にいいことで、子供の頃に抱えていた小さな悩みや、漠然とした不安を胸に抱くよりも先に解決策に辿りつくようになります。未だ見ぬ未来をあれこれ妄想して、そこにある不安要素を取り除く術を身につけることができたともいえるけれど、裏返してみると予見した未来を無意識に断定してしまっている、とも言えます。
将来の夢はなんですか。子供時代によく聞かれる質問ですが、その答えはタイミングによって全然違うものでもいつだってピュアな回答だった気がします。プロアスリート、ミュージシャン、パイロット、お医者さん。それが大人になると身体的あるいは金銭的な理由でその夢は叶わないだろう、と判断したり、自分の能力的にはこっちの仕事くらいが妥当だろう、と勝手に断定してしまうようになる。多くの場合は事実とも言えるかもしれませんが、その先にある夢に辿り着いた人たちは自分の描いた夢や妄想を信じ続けた人なのだと思います。


子供の頃はテレビで見た、探検隊の冒険がフィクションなのかドキュメントなのか判断がつきませんでした。ピュアな心でUMA(未確認動物)を認識し、それらがどこにいるのか、どんな大きさでどんな声を発し、何を食べて暮らしているのか、今自分がテレビの画面に釘付けになっているまさに今、どんなことをしているのか、どんどんと妄想を膨らませていたわけです。『そんなもの存在するはずはない』と冷笑する大人たちの言うことはおそらくその時点では事実なのだろうし、そしてきっと正しさに近い場所からその声は発せられている。だけどあえて正しさとは別のところから、その『いるはずのない何か』を想像したり妄想することが世の中を面白くしている。
幼き頃の自分を懐かしむように、また、その純粋さを取り戻したいという気持ちから今回のプリントTシャツをつくりました。過去にも珍獣をモチーフにしていましたが、例によって1980〜1990年代の某アメリカブランドによるアニマルプリントTシャツをオマージュしています。モチーフはイギリス・スコットランドのネス湖のネッシー、アメリカで目撃情報が絶たないビッグフット、そして僕たちが住むこの日本に潜んでいるツチノコ。空想上の生物だと断定する大人が大半だと思いますが、どこかに存在しているかもしれない、と子供のように目を輝かせて生きる人生のほうがよっぽど楽しく過ごせると思いませんか。
ユーモアが足りなさすぎる最近の世の中に、こんな目線のグラフィックTがあってもいいなと。懐かしさと共に大人たちが失ってしまった子供時代の夢、希望に満ちた妄想を思い出すきっかけになったら嬉しいです。

